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2013年4月22日 (月)

【Music Jacket Gallery】緊急特集!Hipgnosis Collection~Progressive Rock Works

2013年4月18日、Hipgnosis(ヒプノシス)の中心人物であるストーム・ソーガソン(Storm Thorgerson)が永眠した。

ヒプノシスはピンク・フロイドの『神秘(Sauceful of Secrets)』を皮切りに膨大な数のレコード・ジャケットのデザインを手がけ、ビジュアル面で数々のロックのレコードの名作の誕生に携わった。つまり、LPレコードのジャケットをなくてはならないアートの域にまで高めたデザイナー集団だ。

いつもマーブロで大騒ぎしているように、音楽配信が普及し、LPはおろかCDもフィジカルプロダクトとしての地位を脅かされるようになってしまった昨今、ストーム・ソーガソンの逝去は音楽界にあまりにも大きな打撃を与えることになる。

こうなるとジャケット擁護派たちは以前にも増してレコード(この際CDでもいい)ジャケットの必要性と意味と楽しみ方を喧伝する必要があるのではないか?

そこでマーシャル・ブログは緊急特集として、2011年の初頭に開催されたMusic Jacket Galleryでの『ヒプノシス展』を素材にストーム・ソーガソンへの追悼と感謝の意味を込めて(私的に)その偉大な業績を振り返ってみたい。

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古くからのMarshall Blogの読者のみなさんにはもうすっかりおなじみのことと思うが、Music Jacket Galleryは大田区の鵜の木にある大手印刷会社、金羊社の4階に設置されたレコード・ジャケット並びに特殊CDジャケットやボックス・セット専門の博物館で3か月毎に展示品が入れ替わる。

展示のアイテムは先日ご登場いただいた植村和紀氏の個人コレクションである。3か月毎に展示のテーマが決められ、植村氏の6万点にも及ぶコレクションの中から該当するアイテムが選ばれギャラリーに陳列されるのだ。

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今回はヒプノシスの作品を2回にわたって紹介するが、まずはあらためてジャケットの重要性について考えよう。

文明や科学の進歩につれ、「利便性を追求するがゆえに何か大切な物を失う」という話しをよく聞く。

その「何か」の代表は「風情」と「環境」だろう。風情と利便性を天秤にかけて圧倒的に利便性に傾く「何か」も当然多く、だからこそたくさんの発明品が重宝され、地球規模の経済活動の基盤になっているわけだ。

その場合、利便性チームは「利便性」そのものの他に「時間」という大きな特典を同時に獲得しているケースが多いことに気付く。時間の節約も利便性のひとつか…。

例を挙げれば航空機。極端な例だが長距離の移動が飛躍的に便利になった分、強いて言えば「船旅」という風情を失った。そういえば飛行機がキライなデビッド・ボウイが初めて来日した時は船でやって来たのではなかったか?
ま、このケースは風情よりも利便性の方がはるかに優位であることは明らかなので文句は言うまい。いわゆる昭和の三種の神器(洗濯機、冷蔵庫、白黒テレビ)あたりも同様だ。

しかし、少々の不便さには目をつぶってでも、どうしても残しておいた方がよいものもこの世の中にはたくさんある。
…と聞いた風なことをしかつめらしく言うのはここまでとして、ここにそのアイテムを提唱しよう。

それはLPやCDのジャケットである。

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LPからCDへ完全に移行して久しい。私はほとんどジャケ買いをしないが、LPジャケットの魅力は誰に説かれるまでもなく何物にも替えがたいと思っている。
ま、正直一旦CDの利便性を享受してしまうとジャケットのサイズぐらいは目をつぶってもいいかな?ぐらいに思っているのが私のスタンス。実際、とんでもなくアクロバチックな意匠をブチ込んだLPも顔負けのCDジャケットも多数存在しているし…。

音質うんぬんということでは、完璧にLPが勝る。これはもう間違いない…と確信できる体験をしてしまったのだ。これはまた別に機会に…。

その音楽パッケージ、今、これらは恐ろしい事実に直面しているのだ。それは、音楽配信によってLP、CDの別なくジャケットもろとも盤そのものが近い将来なくなってしまう可能性があるということなのだ。

数年前にDVDプロダクションのアメリカ人と話していて彼らが「Physical Products(物質的に存在する商品)」という言葉を使っていることに気がついた。耳にした時は何ともイヤな気分になったもんだ。実際にアメリカではCDショップはもう大都市にしかない。ロンドンはSohoの裏路地あたりにゴチョゴチョ残っているけど大手のショップはすっかりなくなってしまった。

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どこが便利なのかサッパリわからないし、有害性の方ばかり目に付いてしまうので音楽配信の利便性など考察する気にはならないのが正直なところ。百歩譲って家にいながらにして聴きたい音楽をゲットできるという点が少しは便利なのかもしれないが、ジャケットを必要としないというのはどうしても解せない。ジャケットの魅力を捨て去っちゃっていいのであろうか?

洗濯機と洗濯板ほど利便性に差があればよいが、配信とCD(LP)を比べてもCDチームが苦杯をなめる必要は全くないように思うのだ。洗濯と手でこなすのは実に重労働だ。おしんもさぞかしツラかったろう。

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経済的な理由で中古CDしか買わない私なんぞはもはやアイテムそのものよりも、時間をかけて目標のモノを探す作業の方にロマンと愉しみを感じてしまうのね。それも「このアイテムはいくらいくらまで!」と自分を律する。例え探しているアイテムに出くわしても自分の設定した値段より高ければ男らしくその場は流す。少しだけ高い場合は…結構自分に甘くしちゃう!少しだけ高いのを嫌って流してしまうとこれが後々何年も引きずる大きな禍根となって臍を噛む思いをするからね。

それではどうやって欲しいアイテムを見つけるか…。これはもうライナーノーツを熟読するかディスク・ガイド系の本に頼るしかない。もうそこら辺の一般的な音楽雑誌をヒックリ返しても自分が興味を持てそうなアイテムは出てっこないからね。でも最近はライナーノーツ読まなくなったナァ。何か調べるのもインターネットの方が便利だもんナァ。

そうやって自分の好みに合いそうな作品を見つけて中古レコード屋さんに行って探す。これの繰り返し。

その昔、何年も何年も探して手に入らなかったアイテムをとうとう見つけた。Tony Williamsの『Emergency』だ。その頃、まったくこのアイテムは流通しておらず、レコードにはプレミアがついて高価で取引されていたハズだ。

そしてある日、数寄屋橋の中古レコード店でまだエサ箱(レコード陳列棚)に入る前の状態のものを発見した。値段は1,400円(消費税がまだない頃)だった。願ったり叶ったりでレジカウンターの中にあったそれを頼んで売ってもらった。これは本当にうれしかった!

35年位こんなことを繰り返している。だから、音楽配信なんてこと存在自体信じられないのね。やっぱり音楽は回転が必要なんですよ、回転。レコードもCDもカセットもオープンリールもMDもLカセットもソノシートもみんなどっかが回ってたでしょ?エジソンが蓄音機を発明して以来、音楽は100年以上グルグル回り続けているのだ。それがナンデェ、PCは!回らないじゃネーカ!ナニ?ハードディスクが中で回ってるって?「回ってる感」がまったくないッ!

「何だってマーシャル・ブログがこんなこと提唱しなきゃいけないんだよ?!」とイブカシむ読者も多いことだろうが、とにかく音楽を、黄金時代のロックをもっともっと若い人に知って、そして楽しんでもらいたい一心なのだ!

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元来、レコード・ジャケット(スリーヴ)というものは、中に入っているレコード盤を保護するのが一番の目的だ。太古のレコード・ジャケットは演奏者の顔写真やグループ名や曲名を載せただけというデザインが多かった。特にソウルやR&B系のレコードのジャケットは徹頭徹尾コレだよね。

その点、ジャズはBlue NoteやPresitgeに救われている。でもそのBlue NoteにしたってFrancis Wolfが撮った人物写真にReid Milesが色を乗せてちょっとレイアウトを捻っただけタイプ(『Blue Train / John Coltrane』、『Newk's Time / Sonny Rollins(何故かBNのRollinsはほとんどがこのパターンだ)』など)が大半で、タイポグラフィもの(『Somethin' Else / Cannonball Adderley』、『Us Three / Horace Parlan』など)、あるいは線や模様を並べただけのシンプルなパターンもの(『Patterns in Jazz Gil Melle』、『Jutta Hipp with Zoot Sims』など)ばかりだ。中には無名時代のウォーホルのイラスト(『Blue Lights / Kenny Burrell』、『The Congregation / Johnny Griffin』など)なんていうのもあるが、ワザワザ莫大なコストをかけて制作していたワケでは決してない。それなのにあれほどカッコいい意匠を捻り出せたのはセンス良さと時代の空気のなせるワザか…。

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ようするに昔は「わざわざレコードの入れ物なんぞに金をかけることはない」という思想だったに違いない。それがジャケットが内容を象徴したり代弁したりする中身同様の「作品の一部」として重要視され出したのは60年代、The Beatlesが出て来たころからだという。『With The Beatles』のハーフ・シャドウとかね。またしてもFab Four! このイギリスの4人組はポピュラーミュージックを聴覚的にだけでなく視覚的にも変えてしまったのだ。

それとHipgnosisの偉大な業績だ。

そうした恐ろしい早さで商業的にも芸術的にも多様化し成長するロックに合わせてジャケット・デザインもその社会的地位を飛躍的に上げ、百花繚乱、玉石混交、多くのファンの目を、間接的に耳を楽しませることになった。

またLPに限っては、12インチという大きさが泣かせる。あれより大きくても小さくてもいけない。名器1960に見られるようにギターアンプの代表的なスピーカーのサイズも12インチ。「12インチ」という大きさは何か男たちの心を(女性コレクターの方、スミマセン)揺さぶる何かを持っているのだろうか?それは考えすぎか。もちろんLPのサイズはプレイヤー先にありきの基準だろう。いつの時代もソフトよりハードの方が権力を持っているからね。

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さらに、生来清潔好きな日本人はケースとかカバーとかが大好きだと私は睨んでいる。バイオリンやアコギの「ケース」の「カバー」なんてものがあるくらいだからね

それなのに、人類はこの素晴らしいジャケットの世界を切り捨てようとしているのだ。ジャケットはひとつの表現手段、大げさに言うとひとつの芸術だ。音楽配信というただのテクノロジーが12インチ四方、CDは5インチ四方の宇宙を絶滅させようとしているのだ。

「ナニを大げさな…」と思うでしょう。でも、明らかにLP、CDを問わずジャケット自体が地球上でレアなアイテムになることは間違いない。するとどうなるか…。

①ジャケットに惹かれて音楽パッケージを買うことがなくなる。「ジャケ買い」という言葉がこの世から消える。もっともその前にお店がなくなるか…。
②ジャケットを眺めて「ああ~いいナァ」と感動することがなくなる。「アレ、ジャケットもいいんだよね~」なんでセリフがこの世からなくなる。つまり音楽を聴く楽しみが縮小する。

③ジャケットがなくなると何かのアルバムを指す時に大変不便。「あのライブいいよね~!」「え?どんなジャケットだったっけ?」という会話が消滅する。

もっともアルバム自体がなくなろうとしているのだからこれはおかしいか?『七人の侍』の中に左卜全の名セリフがある。「首が飛ぶってのにヒゲの心配してどうするだよ~」…コレである。

④ジャケット・デザイナーやその他デザインに携わる方々が失職し、ヘタをすると才能の喪失につながる。
⑤印刷屋さんが困る⇒製品を運ぶ運送屋さんも困る。関連の業者さんの商況が悪くって国の税収も下がる⇒景気の回復が遅くなる。

…と、まぁ⑤はオーバーにしても、④は痛い。現にジャケットがなかったらこれからここに紹介するHipgnosisという才能も花開かなかったわけで、それだけ我々の楽しみも減るということなのですよ。

若い人たちの意見だとiPodで好きな曲だけダウンロードしてさえいればCDのようなPhysical Productsは必要ないということのようだけど、本当に自分の好きな音楽だったら形にして傍らにおいて置きたいという欲望がわいてくるハズなんだけどな~。ま、このあたりはしょっちゅうマーブロで大騒ぎしているから今日は触れない。

とにかく、有名なお仏壇屋さんのキャッチコピーにあるように「心は形を求め、形は心をすすめる」…なのだ!

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イントロおわり。

さて、HipgnosisはStorm Thorgerson(ストーム・ソーガソン)とAubrey Powell(オーブリー・パウエル)によるイギリスのデザイン・チームで、後にPeter Christopherson(ピーター・クリストファーソン)を加えて3人体制となった。1968年から83年まで存続し、Pink Floyd、Genesis、LedZeppelin、10cc、UFO、Bad Company等々のレコード・ジャケットを制作し、ブリティッシュ・ロックの確立をビジュアル面で援助した。

Hipgnosisというのは「g」を取るとHipnosisとなり「催眠状態」という正式な英単語となるが、それとは関係なく、彼らは「Hip」という言葉を入れて「新しい霊的なもの」のような意味の造語をチーム名としたらしい。

そしてMJGの『ヒプノシス展』…展示だなをひとつひとつ見ていこう。
ここはAlan Parson's Project中心のコーナー。

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私は「ジャケ買い」を滅多にしないが、下段の右から2番目のAl Stewartの『Year of the Cat』はその例外。

まだ他にもジャケ買いをしたこともあったかも知れないが、ハッキリと覚えているのはBud Powellの『Blues in the Closet(Verb)』というアルバム。ジャズ・ピアノの大巨人の名作の数々の中にあっては、まったく人の口に上らない作品だし、取り立てて騒ぐような内容ではない。でも、あのキツく青く染められた美人ジャケットと小文字で統一されたタイトルとアーティスト名…ステキ!…自分にとってはもうこれだけで名盤なのだ!

さて、この『Year of the Cat』、表も裏もネコづくしである。化粧台に香水やらチョコレートやらタバコやらお金やらが散乱していて、それらすべてにネコのモチーフが用いられている。そして、鏡の中には化粧を終えたネコ装束の美女が…。一見、女怪盗のようにも見えるのだが。それと手前に少しだけ見えるネコの尻尾を見ると、ネコ好きの女性が飼っているネコの尻尾かと思えるが、これはその鏡の中の女性の尻尾なのだ。私は別にネコ好きではない。このHiphnosisの凝りようが好きなのだ。
タイトル曲の歌詞を見てみると、「ボガート(もちろんハンプリー・ボガートのこと)の映画の中の朝に」とか「あなたはまるでピーター・ローレのように人ごみの中をさまよう」なんて出てくる。ボギーとピーター・ローレといえば『カサブランカ』だ。すると、鏡の中の女猫怪盗はイングリッド・バーグマンのイメージなのか?な~んて思ったりもする。
ちなみにこのアルバムのプロデューサーはAlan Parsonsだ。

Cat

あ、いつも通り基本的にテキストは下の写真を解説してますから。

2段目左のEdgar Broughton Band の『Inside Out』はモノクロの写真が抜群にカッコいい。Edgar Broughton Bandは1968年に結成されたイギリスのバンド。ものスゴイ個性のあるバンドでは決してないが、ブルース・ロックからハードなロックまで存外に振幅の広いレパートリーをボーカルのEdgar Broughtonが青果市場の競りのような声で聴かせるという感触か?私は好き。

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そのとなりのビルの狭間でラドンみたいなヤツが飛びまわっているのがQuatermass。ロンドン出身のプログレ・キーボード・トリオだ。大好きだったRoxy Musicに参加していたJohn Gustafsonが在籍していたということで高校生の時に欲しかったアルバムの筆頭だった。残念ながら廃盤になってしまい入手できなかった。友人のO君はギリギリで秋葉原の石丸電気の3号館で購入。意地を張ってO君から借りなかったおかげでいまだに聴いたことがない。

Quarter

そして、Alan Parsons。今となってはアーティストとして大看板を掲げているが元々は制作サイドの人で、1967年アシスタント・エンジニアとしてアビー・ロード・スタジオに雇われ、The Beatles の『Abby Road』の制作に携わった。Paul McCartneyの『Wild Life』や『Red Rose Speedway』も手掛けたが、何といっても極めつけはPink Floydの『The Dark Side of the Moon』だろう。

Parsonsはレコーディング・エンジニアを自認しているが、プロデューサーとしての功績も大きく、何でもさっきの『Year of the Cat』のタイトル曲にサックス・ソロを加えてジャズっぽいバラードに仕上げたところなんぞは、「レコーディング」に対するParsonsの貢献度が、スタンリー・キューブリックの映画へのそれと比肩するというんだからスゴイ。実際に聴いてみても今では全くピンと来ないが…。
キューブリックの話しはまた今度。何しろ私、『シャイニング』のあのOverlook Hotelのモデルになったコロラドのホテルに実際に泊まりましたから…ハイ。この話しもまたいつかできるといいナァ。
『Wish You Were Here(炎)』以降、Pink Floydの活動が停滞したことからThe Alan Parsons Projectを立ち上げ、今では押しも押されぬ大スターとなっている。

The Alan Parsons ProjectもHipgnosis作品を身にまとって自己の音世界を拡大したひとりだろう。どれもこれも最高にイマジネイティヴな独特の世界をクリエイトした。

その代表作が『Tales of Mystery And Imagination・Edgar Allan Poe(怪奇と幻想の物語 エドガー・アラン・ポーの世界)』。

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MJGではスペースの関係で少数のゲイトフォールド(見開き)仕様のアイテムを除いて基本的に表1のみが展示されているが、見開き仕様の場合、ヒプノシス作品は当然内側も凝った作りになっていることを知っておくべきだ。
下は同作の内ジャケ。蛇足ながら私所有のLPで補足させてもらった。

表2にはポーの年譜が掲げられ、その次のページからは歌詞が掲載されていて、その狭間をパラフィン紙で区切ってある。オリジナル盤もこうなっているのかどうかは知らないが、とにかく豪華!LPだからこそできるうれしい装丁だ。

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中の写真やイラストがまた素晴らしい。ロジェ・バディム、ルイ・マル、フェデリコ・フェリーニらの監督競作でポー作品をベースにした『世にも怪奇な物語』というオムニバス映画があったが(1969年)、このジャケットに挿入されている数枚のセピア調の写真だけでHipgnosisはあの映画と同じくらいポーの世界を表現しているのではないか?

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B5大の豪華なブックレット(解説と訳詞)も付いていた。

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こちらは後年手に入れた絵ハガキ。

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今回、この記事を書くにあたり久しぶりにこのLPを引っ張り出して来たらこんなチラシ(そういえば最近めっきり「チラシ」って言わなくなった。みんな自然に「フライヤー」って言うよね?もう「チラシ」は寿司屋世界だけのものなのか?映画のチラシは私の青春だった。集めてばっかりなのよ。この話もいつかまた…。)が出て来た。

名門レーベルChrysalisのアーティストの宣伝だ。名前は「クリサリス・レコード・ニュース」。同レーベルがアメリカに進出したのを記念してキング・レコードさんが発行している。スゴイ。今時こんなのって全くないじゃん?当時は誠にたくさんのロック・リスナーがこんなレーベル意識を持っていたのだろうね。

どれどれ、誰が紹介されているのかな?まず、残念ながら発行年は不明だが、「クリサリスの3大アーティスト(文面では律儀に「アーティスツ」と複数形の表記になっている)がロスに勢ぞろい」とあって、ロビン・トロワー、ロリー・ギャラガー、ジェスロ・タルがロサンゼルス・コロシアムでコンサートを開くのだそうだ。ク~、行きて~!

いいですか?ここから先がスゴイ!この時の動員が、見込みも見込んだり、ナント10万人!10万人ですよ、10万人!言っちゃ悪いけど、今の日本だったらチッタが何とか埋まるぐらいかな?もっともロリー・ギャラガーを観ることはもう永久にできないけど…。
その他の「クリサリス・レーベルの強力アーティスト」として名前が挙がっているのは;
テン・イヤーズ・アフター、プロコル・ハルム、UFO、レオ・セイヤー、ジェントル・ジャイアント、スティーライ・スパン…。なるほど強力だ!他にフィリップ・グッドバンド・テイトだのササフラスだのカールハインツ・シュトックハウゼンだの…スミマセン、勉強不足で知りませんわ。
いずれにせよ、こうしたバンド名や人名がレコード買った人たちの家のお茶の間に広がっていたんですよ。何しろ今と違って新しいロックがジャンジャン出てきてその刺激を謳歌し狂っていた時代ですからね。隔世の感は否めないでしょう。

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かわって10ccのコーナー。もう好きで好きで…でも本物を観たのは2010年が初めてだった。

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10ccもセカンド・アルバムの『Sheet Music』からHipgnosisが手がけるようになった。

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10ccへの作品の中ではやっぱり『How Dare You !(=あーた、よくもそんなことができわね?!)』が一番かな?これの内ジャケットがまたイカしてて、パーティで一部屋に集まった紳士淑女が全員電話をしているという図。何年も前の『こち亀』に誰もが携帯電話を持ち始めて、電車に乗っている人全員が携帯で電話をして大混乱!というアイデアがあったが、あれを見た時、即座にこの『How Dare You !』の内ジャケを思い出してしまった。
大好きな大好きな10cc、この『How Dare You!』はとりわけ素晴らしい。だって、捨て曲が全くないどころか全曲が輝いている。「I'm Monday Fly Me」、「Rock'n'Roll Lullaby」、「Art for Arts Sake」特に最後の「Don't Hang Up」がたまらなく美しい。後年この曲のPVをYou Tubeで見つけて仰天した。今回もここに貼り付けようかと思って検索したがなくなっていた。

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Steve Dawsonと10ccの話しをした時、イギリス人は10ccのことを「スタジオ・ミュージシャンの集まり」ととらえていることを知った。

上段真ん中の『Deceptive Bends(愛ゆえに)』は10ccが分裂してからの作品。ちなみに10ccのバンド名の由来が「男性の~」と言われていいるが、これは誤った情報らしい。

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Hipgnosisはジャケットの裏表だけでなく、インナースリーブにも素敵なデザインを施してくれる。

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Godley & Cremeチームが好きな私は、このアルバムまでが好き。このアルバムからは『The Things Do We for Love(愛ゆえに)』というどこのカラオケにでも入っているようなヒット曲も出たが、一番10ccらしいのはなんといっても2分弱の『I Bought a Flat Guitar Tutor』だろう。この曲、歌詞の内容や語尾にしたがってコードがついていくというモノスゴイ内容。diminishやaugumentなんて単語は当 たり前。
例えば"I bought a flat(アパートを買ったよ)"のなんてのは不定冠詞の「a」はAを弾いておいて"flat"でAbに移動する。「see」は「C」だし、語尾が 「-phe」になっているとコードが「E」になるという仕組み。これで丸々1曲仕上げている。それがまた4ビートに乗って至極音楽的だからスゴイ。愛すべ き小品だ。

まぁ、本当に色んなバンドの作品を手掛けているね。

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そうT Rexの『Electric Warrier』もHipgnosisの作品なんだよね。特にHipgnosisらしくないような気がするが…。

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ToddのライブもUKの『Danger Money』もいかにもHipgnosisらしいタッチで好き。なんか内容的にこのライブ盤のトッドはどうもしっくりこない。 『Another Live』の方が全然スキ。

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UKは初来日の時、日本青年館に観に行った。当時は「第2のELP」なんて呼ばれていた。ジョン・ウェットンもエディ・ジョブソンもスゴかったけど、何しろ初めて見るテリー・ボジオに驚いたな~。

タイトルが先なのかデザインが先なのかはわからないが、Danger Money…アブク銭、うまいこと考えたな…。

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YESはRoger Deanって相場が決まっていたのに復帰第1作となった『Going for the One』はHipgnosisが担当した。これはリアルタイムで聴いたが、『Fragile(こわれもの)』や『Close to the Edge(危機)』のサウンドを期待していただけに、そのポップなサウンドに大いに肩透かしを食らった記憶がある。ただ、これは三面のゲイトフォールド・ジャケットでちょっとうれしかった。コレ、今デザインをまじまじと見るとメッチャいいな。

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Alan Bown諸作も実にHipgnosis丸出しでカッコいいが音は聴いたことがないな…。それこそジャケ買いしてもいいかも…。

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ここのセクションはいいな~。Brand XにGenesisだもん。おまけにELOも入ってる!

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上段真ん中のBrand Xの『Unorthodox Behavior(異常行為)』にはブッ飛んだっけナァ。

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John Goddsallなんてギタリスト、全く聞いたこともなくて。Percy Jonesのベースも驚いた。何よりもこのジャケットのデザイン!ブラインド越にこっちを見てる。ちょっとチャールトン・ヘストンに似てる。これだけで「異常行為」のすべてを表現しちゃってる。
上段一番左はそのBrand Xのセカンドアルバム『Moroccan Roll』だが、写真に幾何学的な図形を重ねるHipgnosisお得意のパターン。YESみたいだね。

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そのとなりの『Live Stock』もいかにもHipgnosisっぽい作品だ。でも、音はジャケットのイメージと大幅に異なる凄まじいジャズ・ロック。ここではPhil Collinsの他にドラマーとしてKenwood Dennardが参加している。この人はJaco Pastoriousバンド(Aurex Jazz Festivalのビッグバンドではなくコンボ)で来日した人。その時のギターを担当したのは渡辺香津美だった。

また、この人はManhattan Transfer初来日時のドラマーで、その時のメンバーはベースがAlex Blake、ギターはナ、ナントJack Wilkinsだった。実は私はある人の紹介でニューヨークのJackのアパートに遊びに行ったことがあって、ファンだった私は至福の時を過ごしたのだった。今でも彼のギターを抱えて撮ったツーショットの写真を大事にしている。

それと、このマントラ初来日のコンサートは後日ビデオ化された。それを後から知った時は時遅し…もう入手困難だった。ところが探しに探した結果、見つけた見つけた、長野市の小さな本屋の中古ビデオのコーナーで1,000円ぐらいでゲットしたのだった。ああ幸せ!

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下段の左2枚はElectric Light Orchestraのファーストとセカンド。まだRoy Woodがいたころのファースト・アルバムはプログレ風味丸出しで大好き。後年の彼らの音楽とはまったく異質なものだが、ELOの最大の特徴であるストリングスを巧みに取り入れているところが素晴らしい。でも、ジャケットは双方Hipgnosisっぽくないというのが私の印象。

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ELOは武道館へ見に行った。曲はアンコールでやった「Roll Over Beethoven」しか覚えていないが、レーザー光線を場内のところどころに設置したプリズムに当てて鮮やかなライト・ショウに演出したのが印象的だっ た。当時はまだレーザーなんて珍しかったからね。多分、それに見とれて演奏はロクに聴いていなかったんでしょう。
その「Roll Over Beethoven」が収録されているのはこのセカンド。
これ電球が宇宙を飛んでる。後々もELOのロゴが入った長岡秀星のイラストのデッカイ円盤がジャケットに登場したけど、ナンデ宇宙趣味なんだろうね?

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中段右から2番目はGenesisの名盤『A Trick Of The Tail』。「看板のPeter Gabrielが抜けちゃったテンヤワンヤの名バンドのボーカルを伏兵Phil Collinsが救う」の巻だが、特徴的なイラストが多いHipgnosisだがこのイラストはちょっと異質に思う。このアルバム、歌詞がジャケットに刻まれているのだが、滅法読みにくいフォントなのが泣きどころ。

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その右となりはいかにもHipgnosisらしい美しく幻想的な写真を配したGenesisの『…And Then There Were Three…(そして3人が残った)』。そして、残った3人が来日して観に行った。確か中間試験の最中だった。試験の結果は散々だったけど、今にして思えば本当に行っておいてヨカッタと思っている。

そういえば、これもSteveとの話。プログレの話をしていてジェネシスに触れたら小声で「ジェネシスは全然聴かないナァ」と言っていた。ナンカもっともイギリスらしいバンドはイギリス人に聴かれていないのか…とちょっと驚いた。ま、スティーヴは基本的にはブルース・ロックの人だからね。

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Genesis最高傑作と言われる中段左から2番目の『The Lamb Lies Down on Broadway(眩惑のブロードウエイ)』。

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Hipgnosisのデザインは徹頭徹尾モノクロ。下のようにインナースリーブも完全にモノクロだった。

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「Japan Progressive Rock Fes 2010 in Tokyo」に出演したSteve Hackettはこのアルバムから「Fly on a Windowshield」を演奏していたっけ。
それにつけてもアルバムタイトル曲のMike Rutherfordのベースラインのカッコいいこと!
そして、このプログレッシブ・ロック屈指の名盤と知られているアルバムにはその正反対に位置する音楽ともいえるR&BのThe DriftersやTemptationsの名曲からの引用がいくつか含まれているというのが実にシャレているではないか。


さてさて、Hipgnosisとのコラボで最も大きな効果を挙げたのは間違いなくPink Floydでしょう。

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Hipgnosis最初の仕事も『A Saucerful Of Secrets(神秘)』だったという。

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また、Storm Thorgersonのお気に入り自己ベスト5には『Atom Heart Mother(原子心母)』と…

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『Wish You Were Here(炎~あなたがここにいてほしい)』の2作を繰り入れている。

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個人的には『Animals』のジャケットが好きで、実際にロケ地となったロンドンのBattersea Power Station(バタシー発電所)まで見に入って来た。Hipgnosisはヘリウムガスを入れた作り物の豚を実際に発電所の上空に飛ばし撮影した。

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『The Dark Side Of The Moon(狂気)』、『Meddle(おせっかい)』、『The Wall』、『Animals』等々、パターンもの、コラージュもの、イラストもの、得意の写真加工ものとありとあらゆるテクニックを駆使ししてPink Floydの音世界を作り上げようと努力したように感じる。

Floydの場合、後に出てくるドラムNick Masonをはじめ、Dave Gilmour、Rick WrightらのソロアルバムもHipgnosisが手がけている。メンバーたちもよっぽどHipgnosisの作風が気に入っていたに違いない。
下段右端の2作は松任谷由実の作品だ。日本人ミュージシャン向けのHipgnosiss作品はこの2作だけなのかな…?

『Wish You Were Here』は下のような濃紺のビニール袋に包んで発売された。ここに張ってあるロボットの握手のイラストがまた秀逸。剥がさないでよかった~。

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ここは色々と詰め込まれているな…それだけHipgnosisの作品の幅が広いことに驚かされる。

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上段右から2つめはBe Bop Deluxeの『Drastic Plastic』。コレ何のデザインなんだろうか?いまだによくわからない。左上にはブラインドのようなものがあって、キッチンの片隅を斜めに切り取ったようなイメージか?ニートなデザインが素敵。でも内容は『Axe Victim』、『Sunburst Finish』、『Live! In The Air Age』の方がよかった。私はジャン・コクトーのことは門外漢だが、ことのほかBill Nelsonが好きだった。ソフトな歌声とちょっと歪みすぎているけどソフィスティケイトされたギターがお気に入りだった。Marshallじゃないな、あの音は。Bill Nelsonの80年代のソロ・アルバムを数枚聴いたが、テクノに毒された無味乾燥な音楽となっていてかなりガックリした。ところで、Be Bop Deluxeなんて名前もカッコよくない?

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その右隣りはCaravanの『Cunning Stunts』。カンタベリー派のバンドらしく長尺の曲を飽きずに聴かせる力量がすごい。B面の18分にも及ぶ「The Dabsong Conshirtoe」が圧巻。徐々に徐々に関係ないメロディが入り込んで来て最後には全く別の曲になってしまうアイデア秀逸。しかし、このバンドはカンタベリー派を代表するプログレ・バンドであるにも関わらずHipgnosisとの縁が浅かった。それでも『In The Land of Grey And Pink』や『Waterloo Lily』などは内容を指し示すかのような素敵なジャケット・デザインだった。この『Cunning Stunts』の次作の『Blind Dog at St.Dunstants(聖ダンスタン通りの盲犬)』もHipgnosisの作品ではないが、実際にカンタベリーにある聖ダンスタン通りのイラストを使用している。数年前そこを訪れてきたので後日『イギリス-ロック名所めぐり』の「カンタベリー編」で紹介する予定だ。

カンタベリー派といえば、Soft MachineにHipgnosis作品が皆無なのが意外だ。すごくいい仕事をしたろうに…。

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中段の真ん中は前出Edgar Broughton Bandの同名アルバム。精肉所の倉庫で多数の牛がブラ下がっている中に人体がひとつ。内容も結構イケるが、ジャケットのインパクトには遠く及ばない。

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下段左から2番目。考えてみるとEmerson Lake & Palmerも大方向転換をした『Love Beach』を発表するまでジャケットに自分達のポートレイトを使わないバンドだった。ファースト・アルバムしかり、『Tarkus』しかり、『Pictures at an Exhibition(展覧会の絵)』しかり…みんなイラスト。そしてこの『Trilogy』だけがHipnosis作だ。次作の『Brain Sald Surgery(恐怖の頭脳改革)』では映画「エイリアン」のデザインで有名なスイスのイラストレーター、H.R.Giger(ギーガー)とコラボし、後年も何枚かギーガーの手によるCDを発表した。
昔も好きだったけどELPって今聴いてもメチャクチャいいよね。いいですか?70年代には彼らは「ミュージック・ライフ」誌の読者人気投票で1位だった時代があったんだゼ!プログレ・キーボード・トリオが日本で一番人気者だった時代があったのだ。2010年にロンドンでELPを観たのは最高の幸せだった。

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下段右から3つは元Yesのギタリスト、先日亡くなったPeter Banksのバンド。お得意の身体拡大パターンで非常によい仕上がりだ。

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上段のAl Stewartは前出。Pink Floydメンバーのソロ作が2段目に来て…

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3段目はPeter Gabriel。左から2番目の『III』はThorgersonお気に入りベスト5の中の一作。

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でも、私はその左のファーストが大好きでよく聴いた。ジャケットもこの車の色合いと水滴が非常に美しくて気に入っていた。このアルバム、全曲いいんだよね~。

初めて聴いた時、「Wating for the Big One」のRobert Fripのギター・ソロには随分驚いたっけ。ずっと後年、トム・クルーズの映画(だったかな?)でこのアルバムの2曲目「Solsbury Hill」が使われていた。そういえば、PeterのBootlegのライブアルバムを西新宿で入手した。このアルバムの発表直後ぐらいのレコーディングでレパートリーは全曲同アルバムからだった。それを大分後になって中古レコード屋に売ったところ、買った値の何倍もの値段がついて驚いたことがあった。売っちゃ買い、売っちゃ買いしてたもんですからタマにはこういうことも起こります。

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上段の左端のGodley&Cremeの『Freeze Frame』もとてもHipgnosisらしい絵柄。得意の写真とイラストの合成だ。このアルバムには「An Englishman in New York」というかの有名なジョーディー(ニューキャッスル出身者のアダ名)のヒット曲と同じようなタイトルの曲が入っているがこっちの曲の方が私的にはゼンゼンよろしい。

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今回の記事を書くにあたって「もしや」と思い、彼らのファーストアルバム(LP3枚組)の『Consequences(ギズモ・ファンタジア)』をレコード棚から引っ張り出して来てチェックしたが、あれはHipgnosisではなかった。あれこそHipgnosisっぽいと思ったのだが…。

これは豪華ボックス収納のLP3枚組で大変高価だった。中3か高1の時に発売されてすぐにお小遣いをはたいて買ったが、友人みんなから「こんなの買ってバカじゃないの?」と言われたのを覚えてるナァ。でもスンゲェいい曲は入ってるんだぜ。

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下段の一番左端、Pink Floydのドラマー、Nick Masonのソロ・アルバム『Nick Mason's Fictitious Sports(空想感覚)』はお気に入り。にもかかわらず、恥ずかしながらHipgnosisの作品だとは知らなかった。Carla Bleyが作曲を手がけていて独特な音感覚が快感だ。Carla BleyはStuffとの『Dinner Music』や自身のライブ・アルバム『Live!』という名作を世に問うている女流ピアニスト&オルガニスト。

NHKの「みんなのうた」に数多くの佳曲を提供している名作曲家にしてジャズ・ピアニストの渋谷毅氏は『Live '91 / Takeshi Shibuya Orchestra』にCarlaのアレンジによるトラディショナル曲『Soon I Will Be Done With The Troubles Of The World』の壮絶な演奏を残している。必聴。これはバラードだが、もし音楽に人の心を動かす「力」のようなものがあるとするならば、こういう演奏を指すことはまず間違いない。もし、このライブ盤の録音現場に居合わせていたら私は間違いなく号泣していたと思う。このアルバムのベースの川端民生さんもドラムの古澤良二郎さんももう鬼籍に入ってしまった。ドルフィーのように名演奏家は名演奏とともに消え去ってしまう。

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上段の真ん中はMoody BluesのギターJustin Haywardのソロアルバム『Songwriter』。これもHipgnosisだったんだ?Hipgnosisにしてはヤケに野暮ったい感覚。50年代のマイナーなジャズ・ギタリスト(イメージはDempsey Wrightの『The Wright Approach』)のアルバム・ジャケットのようだ。ところで、上野のHard Rock CafeにはJustin Haywardのストラトが飾ってありますよ。

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下段右から2番目もStorm Thorgersonが自己ベスト5の一角に数えるThe Niceの『Elegy』。実際に砂漠に赤いビニールのサッカーボールを持ち込んで撮影したらしい。CGなんて無かったからね。

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その右どなりもThe Niceで『Five Bridges』という作品。魚眼レンズで撮った橋を組み合わせて複雑な幾何学模様を作り出していて、見開くとさらに立派な絵面となる。これもジャケット欲しさに買ったわ。結構ジャケ買いしてるじゃんねー。

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上段は一番右を除いてRenaissance(ルネッサンス)の諸作。

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この他『Scherazade And Other Stories』という作品もHipgnosisだ。どれもジャケットはいいのだが、アタシャちょっと苦手…。「Progressive Rock Fes」でSteve Hackettとともに来日した。正直、四人囃子の人たちと楽屋でおしゃべりをしていてほとんど見なかった…失敬。

ちなみにボーカルのアニー・ハズラムの旦那さんはロイ・ウッドだ(だった?)。

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上段右端と中段(右端は除く)はString Driven Thingというバンド。これらも実に魅力的なジャケットだが、音は大したことない。

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またまた出て来たPink Floyd人脈の作品は下段左端のSyd Barrettの『The Mad Cap Laughs』。でも、これタマ~に聴くとなかなかにいいんだよね。

写真がカッコいいな。よくSydのことを「狂気、狂気」って言うけどこれを聴いた限りではピンと来ないな。そういえばSydも亡くなっちゃいましたね。

最近、The Whoに関する本を読んでいたら、元ミュージック・ライフの編集長、水上はる子さんはロンドンでシドに会ったことがあるそうだ。スゲエな…。

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Steve Harley & Cockney Rebelの『Face To Face』。映画の1シーンを切り取ったようなドラマっぽいデザインもHipgnosis得意のパターンだが、これはその代表といってもいいだろう。昔、Cockney RebelのLPが手に入らなくてネェ。バイオリニストがバンドにいることに惹かれてすごく聴きたかったがまったく中古でも出なかった。実際に彼らの音楽を耳にしたのはかなり時間が経ってからだった。感想はヒ・ミ・ツ…。先日BBCのライブを買って聴いてみたが、結構よかった。

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Sad Cafeの『Misplaced ideals』。

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これも同じ作品。つまりこの本体の絵柄があまりに醜悪なので、上にある黒いカバーをつけて発売した。有名なジャケットだが残念ながらこれも音を聴いたことがない。今見ると特段醜悪には見えないが…。

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やっぱりいいな…Hipgnosis。

Music Jacket Galleryの詳しい情報はコチラ⇒金羊社オフィシャル・ウェブサイト

つづく


(一部敬称略 取材協力:植村和紀氏、金羊社奥平周一氏)